個人、飲食店が迷う酒税法の全て~法律違反にならないために~

個人、飲食店が迷う酒税法の全て~法律違反にならないために~

結論

まず最初に結論から

  • アルコール度数1%未満の醸造(ワインやビール作り)は合法
  • 自家製果実酒はアルコール度数20%以上のお酒を使えば合法だが穀物・ぶどう類を入れるのは違法
  • 個人の自家製果実酒は自家消費(同居家族内)が原則だったが、無償で他人に譲渡しても合法(2007年政府答弁で基準が明確化)になった
  • 飲食店、旅館等の自家製果実酒は手続きをすれば店内販売は複数の条件を守れば合法(2008年に酒税法の特例措置)だが店外販売(お土産、WEB販売等)は違法
  • カクテルはアルコール度数20%未満のお酒を使っていてもその場で作って提供は合法、作り置きは違法
  • 個人、飲食店問わずサングリアは違法の可能性が高い

※これらは製造免許を持っていない個人・飲食店・旅館等の話です。

アルコール度数1%未満の醸造は合法

根拠は『酒税法第二条』

この法律において「酒類」とは、アルコール分一度以上の飲料(薄めてアルコール分一度以上の飲料とすることができるもの(アルコール分が九十度以上のアルコールのうち、第七条第一項の規定による酒類の製造免許を受けた者が酒類の原料として当該製造免許を受けた製造場において製造するもの以外のものを除く。)又は溶解してアルコール分一度以上の飲料とすることができる粉末状のものを含む。)をいう。

国税庁のHPにも上記法令を基にした同様の解答がされています。

では市販されているビール作成キットや手作りワイン道具は何なのか?
これらは1%未満で醸造する前提で市販されています。
しかしながら、酵母の発酵力は凄まじく潰した葡萄汁を放置しておくだけであっという間にアルコール度数1%を超えますので、実質的に法律を遵守したワインやビールの醸造は不可能と思っていた方が良いです。

自家製果実酒はアルコール度数20%以上のお酒を使えば合法

根拠は『酒税法施行令 第50条第1項(みなし製造の規定の適用除外等)』

一 当該混和前の酒類は、アルコール分が二十度以上のもの(酒類の製造場から移出されたことにより酒税が納付された、若しくは納付されるべき又は保税地域から引き取られたことにより酒税が納付された、若しくは納付されるべき若しくは徴収された、若しくは徴収されるべきものに限る。)であること。
二 酒類と混和をする物品は、糖類、梅その他財務省令で定めるものであること。
三 混和後新たにアルコール分が一度以上の発酵がないものであること。

ただし、注意点は三番目で1度以上の発酵がないものという点です。

穀物やぶどう類は酵母菌が付着しやすく簡単に発酵するため20%以上のお酒であっても入れてはいけない事になっています。

※実際はアルコール20%以上では酵母菌は活動出来ず死滅するので発酵する事はないのですが・・・

根拠は『 酒税法施行規則 第十三条(みなし製造の規定の適用除外等)』

3 令第五十条第十四項第二号に規定する財務省令で定める酒類と混和できるものは、次に掲げる物品以外の物品とする。
一 米、麦、あわ、とうもろこし、こうりやん、きび、ひえ若しくはでん粉又はこれらのこうじ
二 ぶどう(やまぶどうを含む。)
三 アミノ酸若しくはその塩類、ビタミン類、核酸分解物若しくはその塩類、有機酸若しくはその塩類、無機塩類、色素、香料又は酒類のかす

個人の自家製果実酒は他人に無償譲渡しても合法との政府見解

消費者が自家製造した果実酒の無償譲渡は酒税法で一番揉める曖昧な所でした。しかし2007年衆議院の政府答弁書で酒税法に違反しないと見解が示されました。

根拠は『衆議院議員逢坂誠二君提出酒税法に関する質問に対する答弁書』

酒税法(昭和二十八年法律第六号)においては、酒類に他の物品を混和することにより、適用される税率が異なる酒類に該当することとなる場合も想定されるため、税負担の公平性や酒税収入の確保の観点から、酒類に他の物品を混和する行為も原則として酒類の製造とみなし、酒類の製造免許を受けなければならないこととしている。
しかしながら、同法第四十三条第十一項において、「政令で定めるところにより、酒類の消費者が自ら消費するため酒類と他の物品(酒類を除く。)との混和をする場合」には、酒類の製造とはみなさないこととしており、この場合には、酒類の製造免許を受ける必要はない。
また、同条第十二項において、同条第十一項の適用を受けた酒類は、販売してはならないこととしているが、当該酒類を無償で知人等に提供することは、同条第十二項に規定する販売には当たらず、同項の規定に違反するものではないと考えている

飲食店、旅館等の自家製果実酒は手続きをし、店内販売等の条件を守れば合法

2008年に酒税法の特例措置で可能となりました。

根拠は『租税特別措置法 第87条の8 みなし製造の規定の適用除外の特例』

酒税法第43条第1項から第9項までの規定は、政令で定めるところにより、酒場、料理店その他酒類を専ら自己の営業場において飲用に供することを業とする者がその営業場において飲用に供するため当該営業場において蒸留酒類(同法第3条第5号に規定する蒸留酒類をいう。次項において同じ。)と他の物品(酒類を除く。)との混和をする場合(同法第7条第1項の規定による酒類の製造免許を受けた者が当該製造免許を受けた製造場において当該混和をする場合又は同法第43条第10項の規定に該当する場合を除く。)については、適用しない。

ただし条件は以下の通りです。

・1年間(4月1日から翌年3月31日までの間をいう。)に作る数量が営業場ごとに1キロリットル以内
・作った営業場内でのみ販売可能(店外に出る販売は禁止)
・漬けるアルコールは20度以上の蒸留酒であること(清酒やワインは禁止)
・漬ける混和物は穀物類、ぶどう類以外である事
・事前に所轄の税務署に申告が必要(特例適用混和の開始・休止・終了の申告手続き

カクテルはその場で作って提供は合法、作り置きは違法

根拠は『酒税法第四十三条(みなし製造)10』

10 前各項の規定は、消費の直前において酒類と他の物品(酒類を含む。)との混和をする場合で政令で定めるときについては、適用しない。

カクテルについては今までの20度以上とか、穀物類・ぶどう類は混和不可とかの細かい条件がなく、作り置きさえしなければどのようなアルコール度数、混和物でも合法となります。

サングリアは違法の可能性が高い

ここまで読むと、酒税法では果実酒に20度以上の蒸留酒を使う事が求められています。
従って20度以下のワインで作るサングリアは違法と解釈されます。
同様に清酒で作る梅酒等も違法となります。
しかし過去自家製サングリアで逮捕された例はありません。
逮捕者が出てから現実に即して特例が追加されるかもしれません。

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