概要
今後の政局相場を戦うために日経平均が異常な値動きをした2021年秋の政局相場をまとめておきます。
尚、岸田総理誕生での暴落は岸田ショックと呼ばれています。
菅総理総裁選不出馬(事実上の退陣)の背景
①ワクチン接種が進む中、コロナ感染者数の増加が止まらない
②首相の地元横浜の市長選挙で敗北
秋に総裁と衆議院の任期となる前の重要な時期・・・8月22日、菅首相の地元横浜の市長選が政界に衝撃を与えました。
22日投開票の横浜市長選で菅義偉首相が支援した小此木八郎氏の落選が決まった。首相の地元での敗北は自民党総裁選や衆院解散を巡る首相の戦略を直撃する。党内は支持回復に向けて党総裁選の実施に活路を求める。
これにより、菅首相では秋の総選挙を戦えないのではないかという懸念が出ました。
③起死回生の内閣改造で協力を得られず
一部報道で起死回生を狙っていた総裁選後の内閣改造で麻生氏等派閥領袖の協力が得られず、総選挙で勝てる顔ぶれの内閣を作れない事で孤立していたとの事。
菅総理退陣で市場の反応
9月3日、前場引け前に速報が流れた時、市場は上で反応し昼休みに先物はどんどん上がっていき、後場も高値で引けました。
なぜ上げたのか?
- 菅総理では総選挙に勝てないというのが株価の重しだったがそれがなくなったので好材料と判断された
- 8月暴落からリバウンドした状態で日経先物に空売りが溜まっていたが、予想していなかった事態に空売り解消の買い戻しが入った ※なのでマザーズは上げなかった
- その後、総裁選候補者が出そろうとアメリカでは「河野太郎であれば改革なので株価にポジティブ」との報道があり期待買いが入ったため上昇が続いた
結果、33年7カ月ぶり12日連続陽線で31年ぶり日経平均高値更新
総理が退陣しただけでダウとの連動も断ち切り独歩高で記録的暴騰をする摩訶不思議な日本市場・・・
岸田総理誕生で市場の反応
総裁選で岸田優勢が報じられた辺りから雲行きが怪しくなってきました。
そして岸田総理誕生で日経平均-2000円(しかも二日連続で日経先物は1000円幅で下落するという滅多にお目にかかれない暴落)となりました。
河野太郎はテレビで喋る程ボロが出る感じで、さらに中国とのビジネス関係が取り沙汰され失速しました。
①再生可能エネルギー銘柄
河野関連として暴騰していたのが脱原発からの再生可能エネルギー関連であり、それらの銘柄も岸田優勢との報道を契機に失速して行きました。
一方、再生可能エネルギー(脱原発)とは対極の東京電力の株価は、原発再稼働に前向きな岸田総理誕生に向けて上げて行き誕生で一旦下がるも、その後の岸田ショック時には逆行高しています。
②中国恒大集団デフォルト懸念
タイミング悪く、日経平均が謎に暴騰しているタイミングでデフォルトしたら中国のリーマンか?!と言われる中国恒大集団のデフォルト懸念が、前から言われていたにも関わらず謎に急遽市場が反応を始めました。
↓詳細はこちらのまとめを参照
③アメリカ金利上昇による株価暴落
タイミング悪く、コロナ経済危機を救うための量的緩和の縮小(テーパリング)が始まるとFOMCで宣言されても謎に沈黙していたアメリカ長期国債金利が覚醒し上昇開始!
理由は恐らく資源価格の上昇。
天然ガスは火力発電で使うと二酸化炭素の排出が少ないと中国が爆買いをしており欧州での需要も増加し、夏以降価格は上げ続けていました。
このタイミングで原油も8月下旬のハリケーン襲来でメキシコ湾の海上油田施設の被害の影響で上げ続けていた所に、OPECが増産幅拡大を見送りした事で上昇しました。
資源高はインフレを呼び、それを抑制するために利上げが早まるのではないかという懸念を市場に与えます。
勿論これに株式市場は暴落で応えるセオリー通りの展開で、ダウが下がれば2倍下がると言われる日経平均先物は岸田新総理への失望から3倍下がる世界最弱ぶりを発揮し、率先して下落・・・
④岸田総理への失望
岸田総理が繰り返し言っている事に金融所得課税増税があります。
現在一律20%の税率を上げるというのが株式市場にネガティブな印象を与えました。
また、総裁選以降耳にタコが出来るぐらい繰り返し主張されている「成長と分配の好循環」による「新しい資本主義」が「新しい社会主義」ではないかと株式市場にネガティブな印象を与えました。
「新しい資本主義」という言葉自体は経済学の世界ではほとんど聞かない。岸田首相は「新たな資本主義を創る議員連盟」の会長を務める。日本資本主義の父と呼ばれる渋沢栄一の思想に共鳴する議員の集まりだ。渋沢は道徳と経済の統一を唱え、利潤の追求だけでなく、公益を重視する経済の確立を訴えた。
首相は9月の自民党総裁選に向けた政策集に「新しい日本型資本主義」という項目を立て、この言葉を選挙戦のキャッチフレーズにした。「新自由主義的政策を転換する」とし、中間層への分配を手厚くする「令和版所得倍増」を目玉に掲げる。4日に閣議決定した岸田内閣の基本方針には「富める者と富まざる者、持てる者と持たざる者の分断を防ぎ、成長のみ、規制改革・構造改革のみではない経済をめざす」と盛り込んだ。
一部の人だけがお金持ちになるのではなく、分配を通じて格差を縮める発想は、公益を重視する渋沢の思想に通じる。
以上②~④が、岸田総理誕生で12年ぶり8日連落という歴史的暴落(岸田ショック)をした背景となります。
※特に、④の「金融所得課税増税」をしない事を明言した翌日に全面高となった事から金融所得課税増税が一番大きな要因だったようです。
最後に日経平均への影響が大きいと言われる外国人投資家の売買動向グラフを載せておきます。
岸田ショックの終了
日経平均のチャート上は10月6日に大底となっていますが、その後の二日はダウが上げたので日経がギャップアップで始まった分しか上がっておらず、本当に日本独自に上げたのは以下を契機に全面高となっ10月11日でした。
岸田文雄首相は10日のフジテレビ番組で株式の配当や売買にかかる金融所得課税を当面は強化しない考えを明らかにした。「当面は触るということは考えていない。そこばかり注目されてすぐやるんじゃないかという誤解が広がっている」と説明した。
首相は4日の就任時の記者会見で見直しを「選択肢の一つ」として検討する意向を示していた。「貯蓄から投資」に逆行する政策として株価下落の原因だと懸念する声があり市場の反応に配慮したとみられる。
↓10月11日の日本主要指数と日経平均日中足・日足です。