ジャクソンホールは市場に影響を与えるのか?

ジャクソンホールは市場に影響を与えるのか?

ジャクソンホールとは

アメリカ合衆国ワイオミング州ジャクソン市で開かれる年次経済シンポジウム。

カンザスシティ連邦準備銀が主催し世界各国から中央銀行総裁・政治家・学者・評論家らが参加する。

会議の内容は非公開だがFRB議長が講演を行う。

ただの経済シンポジウムであるり、また講演内容等は事前に市場参加者に予想されているため、市場に対する影響はないのが基本。

注目されるようになった理由

1998年、世界経済はアジア通貨危機、ロシア危機、ヘッジファンド危機に見舞われていた。

特にロシア危機によりノーベル経済学者を集めて設立された1000億ドル巨大ヘッジファンドLTCMが破綻に追い込まれ、世界恐慌に発展する可能性があったため、日米はじめ世界各国中銀は利下げに踏み切りこの危機を乗り切った。

この利下げという重要な金融政策の判断を行う契機になったのが、ジャクソンホールでグリーンスパンFRB議長が密かにFRB理事や地区連銀総裁と接触し協議していたからだと判明し、世界的に注目されるようになった。

特筆すべき過去のジャクソンホール

■2013年 バーナンキFRB議長 欠席→テーパリング見送り

2008年のリーマンショックを金融緩和で乗り切りつつあった2013年、当時のバーナンキFRB議長は6月19日のFOMCで急遽テーパリングを示唆。

これを受けて世界的な流動性懸念が生じ株式市場、債券市場、商品市場から一斉に資金が流出。6月20日の1日で世界の株式市場で1兆ドルの資産が吹き飛んだと言われる。所謂バーナンキショックである。

その後8月のジャクソンホールをバーナンキ議長は異例の欠席。9月のFOMCで予想されていたテーパリングを見送り市場との対話を重視する姿勢で混乱を収拾した。

■2014年 ドラギECB総裁 金融緩和を示唆→翌月金融緩和

ドラギECB総裁は原稿にないアドリブ発言「ユーロ圏のインフレ期待が大幅な低下を示した」をした。

また政策姿勢を一段と調整する用意があるとした講演原稿から「必要になった場合は」の文言を省いていた。

結果、9月のECB政策理事会で現状維持との市場予想に反し、利下げと資産買い入れを決定した。

■2016年 イエレンFRB議長利上げ言及→4カ月後利上げ

イエレンFRB議長は講演で「(経済・雇用情勢を述べた後)ここ数か月の間に、利上げを支持する事例が増えてきたと思う」と述べた。7月FOMCよりも踏み込んだ発言であった。

この発言を受けて為替は100円台から101.90円と2円近く円安ドル高に反応した。

■2018年 パウエルFRB議長市場予想通りの利上げを示唆→予想通り9月・12月に利上げ

ジャクソンホールは市場予想通りだったにも関わらずトランプ大統領の元、米中貿易摩擦により景気懸念が渦巻いており、その渦中で市場との対話を無視し利上げを断行した事で日経平均は10月高値から2か月の長きに渡って4000円以上下落

クリスマスが大底となったため私はこれをブラッククリスマスと呼んでいる。

実際のジャクソンホール後の年末までの日経平均の値動き

  • 2013年 アベノミクス初期で約2000円上昇
  • 2014年 10月日銀サプライズ金融緩和で約2000円上昇
  • 2015年 チャイナショックで8月大暴落するもリバウンドしてほぼ変わらず
  • 2016年 秋のトランプ大統領誕生で急落からトランプラリー開始で約3000円上昇
  • 2017年 10月に日経当時最長16連騰があり、日経26年ぶりの高値で大納会となり約2000円上昇
  • 2018年 米中貿易摩擦でトランプラリーの限界が見え、FRBには利上げ見送りが期待されていたため12月利上げに向けて約2000円下落
  • 2019年 約2000円上昇
  • 2020年 コロナショック後のコロナバブル本格化で4000円以上上昇

基本的にジャクソンホールは株価に影響せず、その時々の政治・経済状況に左右されつつも、秋には株価は上がりやすい傾向がある。

唯一下がった2018年はFRBの利上げが理由だが、ジャクソンホールは市場予想通りだったため10月までは日経平均は約2000円上げており、その後の下落にジャクソンホールは関係ない。

トランプ大統領の元米中貿易摩擦で景気懸念があるにも関わらず市場との対話をせずパウエルFRB議長が利上げを断行した事によって下落が起こった。
※実際は12月利上げをするまで下げ続け、実際の利上げで大暴落したもののそこが大底(=悪材料出尽くし)となった。

2021年

【市況】コロナショック後のコロナバブル(金融緩和と財政出動)でアメリカ主要3指数ともに史上最高値近辺

【市場予想】年内テーパリングは許容、焦点は利上げ時期

【パウエル議長講演】
・テーパリングについて「経済がおおむね予想通り進展した場合には年内に資産購入ペースの減速を開始するのが適切となり得る、というのが私の見解」
・利上げについて「見込まれる資産購入縮小のタイミングとペースは、利上げ開始時期に関する直接的なシグナルを送ることを意図するわけではない。利上げ開始については、われわれは異なった、そしてより一層厳しい基準を明確にしている」

【市場の反応】ハト派と評価。アメリカ主要3指数とも最高値近辺だったにもかかわらず1%前後上げて大引け

ダウ(+0.69%)
ナスダック(+1.23%)
S&P500(+0.88%)

総評

ジャクソンホールは基本的に株価に影響を与えないが、中央銀行総裁が市場との対話が出来てないサプライズな講演をした場合、市場に影響を与える可能性がある。

また市場は一期一会であるため、過去を参考にして決めつけてはならない。金利が株価に与える影響は甚大で、一般人が気にしない程度の少しの金利の変化で個別銘柄のファンダメンタルズは変わっていないのに株価は簡単に半分にも2倍にもなるインパクトがあるからだ。

従って、その金利の決定に一番影響力があるFRB議長の動向が9月FOMCを待たずに分かるジャクソンホールは注目せざるを得ないのである。

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