【リーマン以来最大破綻】米第16位シリコンバレー銀行破綻まとめ【市場の反応】

【リーマン以来最大破綻】米第16位シリコンバレー銀行破綻まとめ【市場の反応】

2023年3月に起きたアメリカ大手地銀の連鎖倒産について今後の投資のために記録しておきます。

目次

概要

シリコンバレー銀行破綻

シリコンバレーのスタートアップに多数出資している事で有名なシリコンバレー銀行(以下SVB)が破綻しました。

破綻の原因は以下の通りです。

  1. 40年ぶりのインフレ退治のためのFRBの過去最大規模かつ急激な利上げ
  2. 金利の上昇によりSVB保有債券の含み損が膨らむ
  3. シリコンバレー経営者の間でSVBから預金を引き出した方が良いという噂が広まり実際引き出される
  4. 現金が足りなくなり満期まで保有すれば100%儲かるのに、含み損の状態で債権の売却を強いられる
  5. その売却損(18億ドル)の穴埋めや引き出しに対応する現金を確保するために資本増強プラン(増資)を発表
  6. 経営が苦しいと勘違いされ現代の取り付け騒動(ツイッターでスピード拡散、オンラインバンキングでスピード出金)に発展
  7. 十分な資金は持っていたが流動性がない債権のため引き出しのスピードに現金が足りなくなり破綻
  • SVBの保有資産は28兆円(米16位、日本だと7位のふくおかFG相当)
  • アメリカの銀行破綻で2番目の規模
  • FDICによる1口座あたり預金保護上限25万ドル
  • 問題発覚からたった二日でのスピード破綻
  • 米国のベンチャーキャピタルが出資するスタートアップのほぼ半数と取引

シグネチャーバンク連鎖倒産

13日日本時間早朝(7:00頃)、ビットコイン低迷とSVB破綻の影響で株価が低迷していたシグネチャーバンク(暗号資産取引で有名)が経営破綻を発表。(資産規模15兆円:全米29位)

銀行は破綻させるが預金者は保護

13日日本時間早朝(7:00頃)、米財務省・FRB・FDICは共同声明「SVBとシグネチャーバンクの預金者は完全保護」を発表。

SVBの預金は13日(月)から全額アクセス可能に。

次の潰れる銀行探し

13日は東京時間(アメリカ市場時間外)でアメリカの銀行株が多数下げ、さながら次の潰れる銀行探しの様相。

一番下げていたのはFirst Republic Bankで、「サンフランシスコの情報筋によると、連邦預金保険公社 (FDIC) の銀行審査官、監査官、および上級幹部が、サンフランシスコにあるFirst Republic Bankの本社に入りました」→預金引き出しの行列が出来る

奇跡的なタイミングでクレディスイスショックが追い打ち

SVBショックが終わった(15日銀行株全面高)と思った翌日クレディスイスショック(16日銀行株全面安)が市場を奇襲。

詳細はコチラのブログ参照「SVBショックが終わったと油断したタイミングでCSショック襲来!!先週から話題にはなってたけど・・・久々のガチでヤバイ奴のリバウンドは絶対逃せないのでマイルール破ってちょいレバレッジ掛かったPFに

第三の倒産懸念銀行救済で本当のSVBショック終了?

倒産したSVB・シグネチャーバンク同様に無担保預金の規模が三番目に多く経営危機が懸念されていたFirst Republic Bank(以後FRC)がジャンク級に格付けされ暴落。

16日不意に市場を襲ったクレディスイスショックを乗り切っても17日のアメリカ市場が軟調の理由がFRC倒産懸念。
※ECBが銀行危機懸念の最中にも関わらず0.5%利上げをし、FRBも次回で0.25%利上げ予想になったのも重し。

しかし17日、モルガンを始め大手銀行11行がFRCの支援を決定しアメリカ市場は大反発を受けて明けた日本市場も大反発。

※救済で+9.98%で引けるも引け後に配当一時停止を発表し時間外で-16%

SVBショック終わらず

18日、アメリカ市場で銀行株は再び全面安に。配当を一時停止したFRC(-32%)だけでなく支援を表明した大手行にまで株価下落が波及。

市場は抜本的対策を求めている模様。尚、銀行不安で利上げが出来なくなるとして投資資金はテック株に向かい、さらに銀行の代替となりうるビットコインは凄い勢いで上昇(マイニング課税で急落した270万円から360万円まで上昇)。

アメリカ2年債金利は週間で0.74%下がり、低下幅は1987年10月の世界同時株安「ブラックマンデー」以来の大きさとなった。
※ショック前からは5.54→3.10で2.44%も下落

USB、クレディスイス救済買収

3月18日(土)、クレディスイス救済に向けてスイス政府も絡みUSBが買収交渉を開始、アメリカ政府も介入する事態に。USBは当初10億ドルを提示したためクレディスイスが拒否し最終的に20億ドルで決着。

※株主は少し救われる一方債権(劣後債:AT1債:約2兆円)保有者は全損で影響甚大
※シニア債(優先債)は救われる

クレディスイスをふくおかフィナンシャルグループ相当で政府の保証付きで買収出来るなんてお得ですね。これで旧スイス大手3銀行が一つになりました

結果的にクレディスイス電撃買収救済合意が出た直後に日本市場だけ寄り天暴落し、欧米市場はGDから寄り底プラ転でSVBショックは終了しましました(翌日のイエレン米財務長官の預金保護拡大検討発言がダメ押し)

タイムライン

2023-03-08

資本増強プラン発表

・ポートフォリオから証券約210億ドル相当を売却(18億ドル損失)したと発表
・証券売却損を穴埋めするため資本増強プランを発表
※普通株12億5000万ドルと転換権付き優先株に関係する証券5億ドルを発行
※ジェネラル・アトランティックが普通株5億ドルの買い入れを約束
→合計約22億5000万ドルの資金を集める計画

2023-03-08
2023-03-09

市場激震

・増資の理由が顧客(スタートアップ)が預金を引き出しているから(噂?)と伝わる
・著名投資家ピーター・ティール氏率いるファンドなどが投資先に預金引き出しを呼びかけ不安増幅
→本当の取り付け騒動に発展し株式も売られSVBの株価-60%

2023-03-09
2023-03-10

破綻

・22:30 時間外で一時20%前後下落し取引停止
・23:00 SVB資金調達を試みるも失敗
・23:30 SVB身投げ的な会社売却を模索へシフトしGSが仲介も買い手見つからず
・00:00 SVB従業員に自宅待機を命じる
・1:00 SVBへ規制当局が電撃訪問
・1:30 SVB破綻
規制当局は米連邦預金保険公社(FDIC)を管財人として選任し、その管理下でシリコンバレー銀行の資産を処分する事を決定

2023-03-10
2023-03-13

連鎖倒産


 暗号資産取引で有名なシグネチャーバング(資産規模15兆円:全米29位)がBTCの下落とSVB破綻による株価連れ安で経営破綻 

2023-03-13
2023-03-13

預金者保護

米夕方、日本時間7:00頃、米財務省・FRB・FDICは共同声明を発表「SVBとシグネチャーバンクの預金者は完全保護」

2023-03-13
2023-03-13

バイデン大統領緊急演説

日本時間22:00(アメリカ時間早朝)
・破産した銀行の救済に税金が使われることは無い
・これら銀行の経営陣は即刻解任
・預金者は保護されるが投資家と銀行は保護しない
・銀行の規制は強化されるだろう
・米国の金融システムは健全
※既出情報のみで約5分で終了

2023-03-13
2023-03-15

FRC格付けジャンク級

地銀の中でも大型のFRCも取り付け騒動で倒産危機になりジャンク級に格付けされ株価暴落

2023-03-15
2023-03-16

クレディスイスショック

実はSVBより前からヤバイ(SVBとは違って高金利のせいではなく普通に経営が悪くて破綻危機)と騒がれていたクレディスイス。大株主が追加出資を拒否した事で破綻が視野に入り上場来安値の大暴落

2023-03-16
2023-03-17

FRC支援決定

モルガンを始めとした大手11行がFRCの支援を決定
→日米株式全面高

2023-03-17
2023-03-20

クレディスイス救済

USBが20億ドル(約4200億円)でCSを救済買収まとまる
・全株取得(1株/0.76CHF=30億CHF)
・SNB、最大1,000億CHF資金注入
・政府、90億CHF損失補填
・AT1債、全減損(160億CHF約2兆円)
・CS株主、1UBS株/22.4株で交換
・CS投資銀行部門、切り捨てへ

2023-03-20
2023-03-23

悪いイエレン砲

「銀行預金の全面的な保険や保証に関することは検討も議論もしていない」「預金保険の上限引き上げ検討せず」
→ダウ-500ドルの暴落

2023-03-23
3月 24, 2023

良いイエレン砲

「正当化される場合、当局には預金保護で追加措置を講じる用意がある」
→ダウは高値から約660ドル急落していたが少リバウンドして+75ドル引け

3月 24, 2023
3月 27, 2023

SVB買収で合意

破綻したSVBの買収に入札していたファースト・シチズンズ銀行がSVBを買収する事で合意しました

3月 27, 2023

破綻の噂で本当に銀行が破綻しかけたのって日本でもありましたよね(豊川信用金庫事件)。この時は女子高生が電車で豊川信用金庫に就職が決まった友人に冗談で「信用金庫は危ないよ(金融機関は強盗が入るから危ないよ)」と言った会話が誤解されて流布され取り付け騒動が起きました

市場の反応

シリコンバレー銀行破綻までの株価推移

8日東京時間引け後(SVB経営懸念発覚前日)

市場は平穏で米国債2年は5%を超えていた

9日東京時間引け後(SVB経営懸念発覚日の日米市場)

・これ以上利上げは出来ないとの観測から米国債金利急低下
・銀行株全面安(KBW銀行株指数は一時8.1%安)
・ビットコインはマイニング増税での下落

10日ニューヨーク時間引け後(SVB経営破綻日のアメリカ市場)

・米国債金利急続落
・銀行株続落(KBW銀行株指数は-3.91%)
・円高進行

13日東京時間引け後

・13日(月)朝7:00頃シグネチャーバンク連鎖倒産の報道
・13日(月)東京時間、米財務省・FRB・FDICが共同声明でSVBもシグネチャーバンクも預金者の保護を宣言
→シグネチャーバンクは暗号資産取引が多い銀行でビットコインが一番急騰
・FRBは利上げ出来ないとの思惑が強くなる
※3月利上げ確率が前日まで0.5%確率50%前後だったのに消えて、0.25%が90%以上(利上げなしも数%)となる
→日米国債金利暴落と円高進行
・有事の金買いで金価格上昇

14日東京時間引け後

・13日(月)東京時間、世界で日本市場だけ上がらなかったのに、引け後にはヨーロッパ市場が壮絶な寄り天の急落と共に日経・マザーズ先物も理不尽な程暴落(円高だったとはいえ)
・13日(月)夜、バイデン演説(22:00)直前まで暴落し日経先物27000円タッチし日本だけ総悲観もアメリカ市場が開場するとアメリカ株は激リバ・・・ただし円高のせいか日経先物のリバウンドはダウ比で弱すぎる(ダウが650ドルリバる間に日経先物は230円)

・13日(月)夜、銀行株こそ全面暴落したもののその他の指数は平穏に終えたアメリカ市場とは対照的に14日の日本市場はバリューも、そして金利が下がると上がるはずのグロースも全面暴落で世界で唯一二日連続でSVBショック大暴落となる

15日東京時間引け後

・14日(火)夜、アメリカで寄り天だったとは言え銀行株全面高でリバウンド(※CPI無事通過もあり)

※寄り付き直後でこの後寄り天に沈んだ

・15日(水)、日本市場開場と共に日経先物壮絶ナイアガラ一時マイ転でSVBショックが始まってから三日連続寄り天で世界最弱ゴミ市場っぷりを披露(※ただし銀行株中心にバリュー系は全面高のリバウンド)

16日クレディスイスショック

詳細はコチラのブログ参照「SVBショックが終わったと油断したタイミングでCSショック襲来!!先週から話題にはなってたけど・・・久々のガチでヤバイ奴のリバウンドは絶対逃せないのでマイルール破ってちょいレバレッジ掛かったPFに

17日東京時間引け後

・16日(木)夜間、残るFRC倒産懸念で軟調なアメリカ市場がモルガン等大手銀行11行がFRCを支援する事が決定されると同時に急騰
・17日(金)、日本市場も寄り付きこそ寄り天で急落するもその後はグロース(マザーズ)中心に大リバウンド(※バリュー株は下落多数で軟調)
・ビットコイン上げまくりもグロースが上がる相場のためと考えられる

20日東京時間引け後

・17日(金)夜、銀行株を中心にアメリカ市場暴落=続SVBショック
・18日(土)UBSによるクレディスイス救済買収交渉開始
・20日(月)朝、東京時間開始前にUBSのクレディスイス救済買収電撃合意(ただし劣後債(AT1債)全損)
・20日(月)、日本市場は電撃合意で日経先物急騰し前日比±0前後で始まるも壮絶な寄り天でバリュー・グロース関係なく全面安(特にグロースは金曜日の上げを全部戻す大暴落)
・ビットコインと金に引き続き資金流入
・金利暴落で円高

21日ニューヨーク時間引け後

・CS救済買収合意で寄り天撃沈したのはアジア市場だけで欧米市場はGDから寄り底で全面高
※日本市場は祝日でその夜にSVBショック終了の恩恵受けれず

※FRCだけ最後の格下げで-47%の暴落(ファースト・リパブリック急落、再度の格下げで-地銀株全般は上昇

22日東京時間引け後

・イエレン財務長官の「中小銀行が預金流出に陥るようなら預金保護が正当化されうる」発言で欧米市場は二日連続のリバウンド

・前日祝日でSVBショック終了のリバウンド初日に恩恵がなかった日本市場も動いていた先物は上がっておりGUでリバウンドも深夜にFOMCを控え指数主導で個別株は軟調

※SVBショック終了で金利上昇(=円高)

※銀行全面高で破綻懸念の強いFRCも大きくリバウンド

※これ以降の値動きは塩漬けマンの株奮闘記を見て下さい。

チャート

日経・グロース・ダウ・ナスダック比較チャート(3月9日~16日)

コロナバブル崩壊からのリバウンド中で特にシリコンバレー銀行はスタートアップの半分以上に出資し、その多くが口座を持っているためグロースの多いナスダックへの影響が懸念されましたが、ショックが終わってみればバリューからグロースへの相場転換となりました。
※金利高は続くので銀行の経営悪化が懸念されるので銀行が軟調になるのは分かりますが、その他証券や資源等、バリュー株全部が崩壊し代わりにグロースが上がり始めました。

※世界最弱日経平均お分りいただけただろうか?

CME日経平均先物

夜間祝日も動いていたため先物のチャートを載せます。SVBショック前に謎の上昇をしていた分、SVBショックが起きてからは円高もあって世界で一番劣後した指数となりました。

FRBの利上げによる金利高以外にも日銀の政策変更期待(金融政策正常化のためのYCC修正期待=金融緩和終了)で日本国債金利も急騰し、銀行株を中心としたバリュー株が上げまくっていた市況でいきなりの金融不安でバリュー株全面安となりました。

マザーズ

アメリカではバリューからグロースへの転換が行われナスダックが強さを見せつけましたが日本では3月20日の前日の上げを打ち消す大陰線暴落が酷かったです。

NYダウ平均

コロナバブル崩壊からの異常なリバウンドから調整局面入りで起きたSVBショックでした。

ナスダック

コロナバブル崩壊からリバウンド中のタイミングで、SVBショックによる銀行株全面安でバリューからグロースへの転換が行われ信じられない強さでした。

為替

SVBの破綻原因は金利高だったためFRBが利上げ出来ないとの観測から金利安が進み、それは円高要因であるため高値から安値まで約7.5円動きました。

●SVBショック時の金利の高値→安値

  • 日本国債10年金利0.5%→0.24%
  • 米国債10年金利4%→3.4%
  • 米国債2年金利5%→3.8%

クレディスイスが破綻しかけたのでスイス円も載せておきます。

コモディティ

銀行の金融不安が起きたため金とビットコインが上がった反面、経済不安で原油が下がりました。

後日談

2023年5月1日、ダウもナスダックも日経も年初来高値近辺へとリバっているので株価への影響はありませんが米連邦預金保険公社(FDIC)は米地銀ファースト・リパブリック・バンク(FRC:2022年末時点で全米14位:米史上二番目の規模の銀行破綻)が経営破綻し、公的管理下に置いたと発表しました。

FRCは4月25日の四半期決算で40%の預金流出が判明し、経営危機が表面化、株価が大暴落していました。
※株価への影響があったのは4月25日だけで当時の状況はコチラ参照

当初は民間主体の救済が模索されましたが進展せず一旦破産し公的管理下に置き、その後民間が買収(JPモルガン・チェースがFRCのすべての預金と資産を買収)する事で速やかな業務再開を可能としました。
※5月1日にはJPモルガンの支店として業務再開

https://twitter.com/nrm_710/status/1652972049453969408

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