為替介入に至る市況
コロナにより空前の金融緩和をした世界中の中銀、それにより発生したコロナバブルの後遺症、さらにロシアのウクライナ侵攻により世界中でインフレが進行。
・コロナで在宅勤務需要により住居費が高騰。インフレ指標CPIに占める住居費の割合は約30%
・ロシアは原油・天然ガスの世界有数の産出国だが経済制裁で各国が輸入制限
・ウクライナは小麦の世界有数の生産国だがロシアの侵攻で生産量が低下し、ロシアが黒海封鎖でオデッサ港からの輸出を妨害
アメリカの消費者物価指数は8.6%と40年ぶりの高インフレとなり、しかも高止まり。
FRB始め、世界中の中銀がインフレを退治するため急激な金融引締めに舵を切りました。
FRBは2022年6月に27年ぶりの0.75%利上げを実施したのみならず、3会合連続で0.75%利上げという前代未聞の利上げ(記事執筆時、尚4会合連続はほぼ確定)。
しかし日本は黒田日銀総裁が安倍首相時代に始めた異次元の金融緩和を、せっかく目標のインフレが起きているのに止める事が出来ず、世界の流れに逆行して金融緩和を継続。
これが日米金利差を拡大させ、それは円安要因となるため、異常なペースで円安が進んでいました。
尚、為替介入の原資は外貨準備高(ほとんどが外国証券で、実質的には米国債)であり、日本は輸出大国であるためこれが多いのですが、G7内でも異常な程積みあがっており、むしろ減らしたいぐらいだったので為替介入で減らせるのは渡りに船でした。
為替介入一回目
為替介入が行われた2022年9月22日の未明3:00にはFOMCが3会合連続で0.75%を決定し金利高が進んでいたものの、同時に上がるはずのドル円は同日昼の日銀会合を警戒してか145円を超えずにいました。
その状況で行われた日銀会合で日本銀行が現状維持を決定しドル円は一気に節目の145円を突破!
しかし、直後一気に2円急落し「為替介入か?!」と思われましたが、これは為替介入ではなかったようで値を戻していました。
しかし午後には神田財務官が為替介入を示唆。
(為替介入)スタンバイの状態と考えていい。いつでもやる用意がある。ステルスでやる場合もある。
夕方の黒田日銀総裁会見で「当面利上げはない」との発言があり、昼の乱高下が誤差に見える程の勢いで146円目指して突き進む円安・・・しかし突然っ!ハンマーで殴られたかのような急落!!
これが為替介入であると判明すると一気に5円円高に!(2分で2円、30分で5円円高)
財務大臣・財務官の会見が始まると再び円安に戻っていきましたが、警戒されており神経質な値動きとなっています。
注視しかしない政府・日銀・財務省がやっと注視を止めて行動に出ましたね
そっちがビックリだよね。皆どうせ今回も何もしないって舐めてた人多そう
尚、2022年9月30日に発表された為替介入実績は2兆8382億円(11月8日に発表された介入詳細では覆面介入なしで9月22日だけ)でした。円買い・ドル売りの1日の介入額としては過去最大規模となりました。
二回目に至る市況
2営業日後の9月27日深夜には更に進む金利高に連れて再び145円を窺う円安に・・・単独介入は中長期的に意味がないという過去の結果を踏襲する事に。
しかし、再び145円を超えた時にどうなるか見ものです。
10月11日、日米金利差の拡大と共に為替介入時の水準に接近。
飛行機の中からでも介入出来る!(アメリカ出張中)
必要あれば必要な措置取るという考えはいささかも変わらない。
動きが重要、どこに来たらとかそういうことではない。
10月12日、政府日銀の必死の口先介入も日米金利差というファンダメンタルズには通用せずついに146円を突破。
10月12日、生産者物価指数(PPI)発表後にはさらに円安が進み147円が視野に。
為替介入についてG20で「投機による過度な変動に対応するため」と説明し、各国からコメントはなかった
しかしバイデン大統領はドル高容認発言で日本の為替介入に協調する意志はない模様。
ドルの強さについて懸念していない
10月13日夜、日米金利差拡大の要因となっているインフレの指標CPIの発表を受けて、40年ぶりの高インフレ継続でドル円が急伸しましたが、謎の急落で市場では為替介入か?と言われましたが答え合わせは月末までお預け。
10月14日、ミシガン景況感指数と期待インフレ率が発表され金利高となり、ついにドル円が148円を突破しました。
10月17日に発表された当座預金残高に関する統計により月初の日銀予想よりも1兆円以上減少していた事から13日や14日に「覆面介入」したのではないかと話題になりました。
10月18日には以下の複合的な理由によりさらに円安が進みついに149円を突破!
・イギリス政府大型減税策の全てを撤回→ポンド買いがドル円にも波及
・黒田日銀総裁「金融緩和を継続」→日米金利差拡大思惑
・バイデン大統領ドル高容認発言
10月18日18:00過ぎ、ドル円が急落し為替介入が疑われましたがすぐに全戻ししました。
10月20日、ニューヨーク時間何度か為替介入を思わせる下髭を無視し150円目指して上がり続けるドル円。
10月20日、日本時間16:41全員が為替介入水準と考える150円直前で1日近く寸止めした末、ついに突破した瞬間乱高下。
過度な変動があればこれまで以上に対応し、行動する体制は常に出ており、円買いの原資は無限にある
為替介入二回目
10月21日、フィラデルフィア連銀のハーカー総裁タカ派発言「インフレ抑制の進展の遅さに失望しており、しばらくは利上げを続ける」でさらに金利差拡大。それによりドル円は150円を超えて上がり続けます。
円安は日本時間になっても止まらず、21:37には152円を視野に捉え、なんと1日で2円の上昇を見せます。
22時頃急落し為替介入かと市場はざわつくも、為替だけでなく金利が低下し世界的に株も急騰したため、為替介入ではなくWSJニック記者のFRBハト派姿勢の記事が原因と思われます。
アメリカ市場が開場し今晩の介入はないと思われた23:30過ぎ、突然急落を開始!金利・株は動かず為替だけ動いたため為替介入で確定!
※日経先物は円高により上値が重くなりダウの下げに過剰に下げ影響大
介入終了後?には神田財務官は介入を明示しませんでしたが、日経新聞に「政府・日銀が円買い介入」との記事が出ました。
介入の有無についてはコメントしかねる
結果、約1時間30分で約7円円高になりました。
その後の値動き
10月24日東京時間早朝、二度目の為替介入でドル円暴落したままと思いきや、いきなり怒涛の勢いで円安が進みます。
その瞬間、約5円急落で「三度目の為替介入か?!」との憶測が飛びますが、その後金利が下がっているにも関わらず全戻しでリバウンドし149円手前で揉む波乱の週開けとなり、依然予断を許さない
10月31日に財務省が発表した外国為替平衡操作の実施状況によると6兆3,499億円の為替介入であった事が判明しました。
これを受けて素人が適当な事を言って総ツッコミされていました。
↓ネットのツッコミ
まとめ
FXトレーダーは以下の事を覚えておくと良いです。
・本物の為替介入は数十分(一回目30分・二回目90分)に渡って続き数円(一回目5円・二回目7円)動く
→為替介入が確定してからショートしても間に合う
・基本的に為替のみ動く(為替と相関関係の強い金融商品除く)
・為替介入終了の目安は財務官のコメントやメディアの記事が出た頃?
・政府、日銀の発言に基本的に嘘はない
※今回150円で介入と皆決めつけていたが介入はなく、「水準でなく投機的な値動きで介入」との発言通りの結果だった
※ニューヨーク時間でも介入し「いつでも介入する」との発言通りの結果だった
・為替介入の原資である外貨準備高は日本はG7の中でも異常に多く減らしたいぐらいで、為替介入を口実にアメリカ国債を売れるので、脅しでなくいくらでもやる事が出来る