為替介入に至る市況
中東情勢悪化等でインフレ再燃によりFRB利上げ観測後退
→アメリカ金利高=日米金利差拡大→円安
※ただし日米金利差は2023年より縮まっているのに2023年より円安が進んでいるので、日米金利差では説明できない円安となっています
2024年FOMCが4回利下げする事を織り込む形でアメリカ国債金利が低下し日米金利差は縮まり円高が進んでいましたが、一転中東情勢悪化(=原油高)等でインフレ再燃し、米経済指標も好調な事から利下げ期待が2回(そもそも利下げしなくてよいというタカ派も登場)に後退しアメリカの金利が再び上昇に転じました。
一方の日本は植田総裁率いる日銀が3月日銀会合でマイナス金利解除・YCC撤廃とタカ派で日本国債金利は上昇するも、4月日銀会合では「国債の買い付け額を6兆円から減らす(=実質利上げ)」とのリーク情報に反して現状維持を決め、会見でもインフレ見通しは目標の2%には遠くこれ以上の引き締め(=利上げ)に否定的な見解(ハト派)を述べた事で日本の金利高期待は後退していました。
●2024年1月4日 日米金利差
↓
●2024年4月29日 日米金利差
●ドル円
為替介入前の不穏な値動き
謎の2円急落
2024年4月26日(金) 17:00、謎の2円急落(レートチェック?)がありました。前回の為替介入時も直前に謎の2円急落があったので為替介入が警戒されましたが、為替介入ではないと判断されたのか逆に円安が進行しました。
尚、2024年4月26日ナイトは最後にショートカバーが入ったのか158円を超えて引けていました。
GWの薄い時間に謎の1.5円急騰
2024年4月29日(月)はゴールデンウィークで人がいない中、10:37頃に逆指値狩りが行われたのか、約1.5円急騰し160円を突破しました。
GW中の為替介入
2024年4月29日(月 ※GW)、投機的な仕掛け(逆指値狩り)と思われる朝の1.5円急騰があっても為替介入が行われなかった事から160円手前で推移してた13:05、突然為替介入は始まりました!
今回は約1時間で約5円円高になり、その後ジリジリ円安に戻していました。
尚、日経先物は為替介入中に約300円下落しました。
為替介入も終わったと安心したのも束の間、16:07に約2円急落し「早くも為替介入第二弾?!」と騒然となりました。
神田財務官「為替介入観測について今はノーコメント」
財務省高官「ノーコメント、今作業中だ」
神田財務官「介入かどうか申し上げないが、やる場合は24時間365日いつでも」
その後の動き
当座預金残高予測
日銀が30日発表した5月1日の当座預金残高の見通しによると、29日の為替介入を反映する「財政等要因」による減少額が7兆5600億円で、為替介入を反映していない市場の当初予想とずれが生じたためだ。
為替介入は財務省が判断し、日銀が実行する。円買い介入を実施すると、民間金融機関が日銀に預ける当座預金から円が国庫に移動し、当座預金が減少する。決済は一般に2営業日後になるため、29日の介入が5月1日の残高に反映される。銀行間の資金のやりとりを仲介する短資会社の予想(2兆500億〜2兆3000億円減少)との差額が介入の実施額と推測できる。
残弾予測
市場から円を調達して介入原資にする「円売り介入」とは異なり、円を買うためには元手となるドルが必要になる。元手となる政府保有の「外貨準備」は3月末時点で1兆2900億ドル(約200兆円)に達する。ただこのすべてがすぐに介入原資として使えるわけではない。この中で介入に実際に使える規模はいくらかを巡り、市場参加者の議論が活発化している。
3月末時点で政府は1550億ドルの外貨預金を保有する。SMBC日興証券の末沢豪謙金融財政アナリストは「売却可能な証券は2000億ドル程度で、預金と合わせても3000億ドル程度が短期的な上限」と指摘する。米バンク・オブ・アメリカも同様に「24年の上限を3000億ドル(約47兆円)前後とみている」とする。
より少なく「30兆円弱の余力があるイメージ」(大和証券の多田出健太チーフ為替ストラテジスト)との見方もある。いずれにせよ外貨準備のすべてを今後の介入で使えるわけではなく、今回と同程度の規模の介入による「残弾」は最大で8発程度との見方が多い。
※岡崎良介「ドルが足りなければスワップで米債を担保にアメリカから借りて売ればいいだけ。仲が悪くない限り断られる事はない」との意見もありますが、どうも「為替スワップ」は為替介入には使えない模様です。
通貨スワップと異なり、為替スワップではFRBからドルを調達して為替介入に使う、ということはできませんが、それでも「金融機関が短期債務の更改を拒絶され、流動性不足で金融システム全体が突然死するリスク」を避けることはできます。
【総論】4種類のスワップと為替スワップの威力・限界
また、馬渕真理子「為替介入は12兆円(不確定)以上はアメリカの為替監視国入り覚悟の介入となる」との意見もあります。これが正しければ後1回で打ち止めとなります。
ただし、2024年5月8日に鈴木財務官はいくらでも介入出来ると受け取れる発言をしました。
神田財務官「為替介入、介入原資が制約になるとは特段認識していない」
ドル円値動き
翌2024年4月30日、日銀が夕方発表した当座預金予測から為替介入した事がほぼ確定しましたが、ジリジリ円安に戻しています。
2024年4月30日夜間にアメリカで雇用コスト指数が発表され1.2%と上がっていた事からインフレ懸念が加速し金利が上がり日米金利差が広まった事からさらに円安は進みました。
やはり為替介入はファンダメンタルズには勝てないようです。
FOMC後の不意打ち介入?
2024年5月1日夜間、27:00のFOMC後のパウエル発言(ハト派)でアメリカ市場では株式が急騰しました。しかし一転半導体バブル崩壊で急落する荒い値動きでした。
乱高下のアメリカ市場が引けて一息と思いきや、5月2日 5:10にドル円が急落を開始!どさくさに紛れて為替介入が行われた可能性があります。
この時間帯はまだ日経先物がドル円に機敏に連動するため、日経先物も急落し夜間高値から一時700円の急落となりました。
約1時間で約4.5円円高になりました。
神田財務官「為替介入の有無については今、お話できることはない。介入実績は今月末に公表する予定」
2024年5月2日夕方発表された日銀当座預金の増減見通しから3.5兆円規模の為替介入であったと予想されました。
為替介入予想
2024年5月31日、財務省は外国為替平衡操作の実施状況(令和6年4月26日~令和6年5月29日)を発表し、9兆7,885億円だった事が判明しました。
それは為替介入観測(2回)されていた金額とほぼ同じでした。
そして予想通り為替介入の効果はなかった事がまたしても証明されました。
FX戦士達は為替介入が行われている1時間とかは短期でショートで取る、その後は最後の買い場だからロングを仕込むって言ってましたが、見事その投機行動で正しかった事になりました。
為替介入実績
2024年8月7日に財務省が為替介入実績を公表し、以下の為替介入が判明しました。
・4月29日に5兆9185億円の円買いドル売り介入(過去最大)
・5月1日に3兆8700億円の円買いドル売り介入